掛米、麹米とは?

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それでは今日は、掛米や麹米についてお話しましょう。

掛米(かけまい)とは、蒸した後に冷まされて、直接もろみに仕込まれるお米のことです。

掛米にはこうじを振りかけず、直接もろみの中に投入されます。

1度の仕込みで使われるお米の割合は、こうじ用に使われるお米が2~3割、酒母米(酒母用に使われるお米)が約1割なのに対して、約7割が掛米として使われます。

ラベルの原料米表記には50%以上を使っていれば表示できますので、例えば「山田錦使用」とだけ書いてあるラベルを見つけたとしますと、山田錦を50%以上使用しているという意味になります。

 

麹米(こうじまい)とは、こうじ造りに使用するお米のことです。

蒸米にしたものに、こうじ菌を繁殖させてでんぷんを糖化させることができます。

こうじ菌が分泌する酵素がでんぷんをブドウ糖などに分解し、ブドウ糖は酵母菌によってアルコールへと変わります。

 

なお、特定名称酒には酒米のみが使われることが多いのですが、普通酒には一般米(うるち米)で造られることがほとんどです。

こういうところでも風味が変わってきますので、特定名称酒が一段とおいしい理由がわかりますね。(一般米は食べるとおいしいのですが、お酒造りに使いますとえぐ味や雑味がでやすいのです)

余談ですが、掛米に一般米が使われる一番大きな要因は、原材料費を少しでも安くすませるためです。

また、掛米専用品種もごく少量ではありますが存在します。

興味のある方は「低グルテリン米」で調べてみてください。

 

酒母米(酛米)とは、酒母を造るために必要なお米で、こうじ造りの次に大事な工程となります。

蒸したお米、こうじ、水を用いて優良な酵母を培養したものです。

この酒母造りでうまく酵母を培養できるかどうかが腕の見せ所でもあります。

酒母には2つの種類があります。

生酛系酒母

生酛系の酒母造りは古くから続く製法で、蔵に自生している乳酸菌を空気中から取り込んで乳酸をつくらせます。(家つき酵母や蔵つき酵母とも呼ばれます)

酒母ができるまで一か月くらいかかり、運任せのところもあったのでなかなか品質は安定しませんでした。

それでも、生酛系独特のしっかりとした酒質のお酒ができるため、手作りにこだわっている蔵では今でも生酛造りをしているところもあります。

速醸系酒母

こちらは乳酸を人工的に加える製法です。

仕込み水にあらかじめ醸造用の乳酸を加え、混ぜ合わせたうえで掛米とこうじを投入して酵母の培養が行われます。

こちらの手法ではおよそ2週間ほどで酒母が出来上がります。

 

山卸とは、生酛造りの工程の一部で、半切り桶に仕込んだ酒母に荒櫂(あらがい)を入れて摺る作業のことです。

この作業はこうじの酵素の作用で蒸米のでんぷんが糖化するのを助け、濃醇でキレのよいお酒を造る目的で行われます。

しかし、昔から「櫂でつぶすな、麹で溶かせ」と言われるように非常にデリケートな力加減を要する高度な技なのです。

このため、この山卸の作業を省略することを前提とした山卸廃止酛(山廃酛)が国立醸造試験所で開発されました。「山廃づくり」として知られる技法の基礎ですね。

※生酛から山卸だけを省略すれば山廃、山廃を効率化すれば速醸系の酛となるわけです。(速醸系の造り方ではありません)

 

どうして乳酸菌を加えるのでしょうか?

元々自然発酵を組み合わせて酒母を造ってきた過程で、様々な雑菌を除き、必要な菌のみを残すために培われてきた技術なのです。

酒母を造る過程では、最初は硝酸還元菌、野生酵母、産膜酵母が隆盛を極めます。

5日目ごろを境にこれらは乳酸菌によって駆逐されていくのです。

乳酸菌にもいろいろな種類があり、12日目ごろには球型乳酸菌が、15日目ごろには稈型乳酸菌が隆盛のピークを迎えます。

でもやがては自らの生成した酸によって死滅していくのです。

ここからが清酒酵母の出番です。(加えるタイミングは杜氏の経験と勘です)

生酛においては、菌や酵母の生存競争が長い時間をかけて行われるわけですね。

 

吟醸酒誕生を語る上でかかせない協会酵母のお話

もともと日本酒にはお米の持つ地味な香りだけがあり、ワインのようなフルーティな香りはありませんでした。

鑑評会向けに優れた香りを持つお酒を醸造しようと工夫が重ねられて吟醸酒が誕生するわけですが、これに大きな役割を果たしたのが協会系酵母の中の「協会7号(真澄酵母)」と「協会9号(香露酵母・熊本酵母)」です。

大きく分けて、発酵の時に泡をたてる「泡あり酵母」と、泡をたてない「泡なし酵母」に分類されます。

泡あり酵母

ビールやスパークリングワインといえばわかりやすいでしょうか?

通常のアルコール発酵は、進むときに二酸化炭素を生成します。これが「泡」です。

蔵人たちは醪(もろみ)からあがってくる泡の「きめ」を観察し、泡のきめが筋泡→水泡→岩泡→高泡→落泡→大玉泡→中玉泡→小玉泡→池と変化をする様を見て、発行の進捗状態を見極めてきました。

微生物学的に見ますと、泡あり酵母は細胞壁が撥水性であることを特徴としています。

泡なし酵母

泡あり酵母では二酸化炭素の気泡表面に酵母が吸着し泡を形成するのですが、島根の酒蔵(簸上清酒合名会社)で、突然変異により発酵時に泡を出さない酵母が発見されました。

こうした酵母でお酒を仕込めば「泡守り」が不要になるなど利点も多いので、ここから研究が進みました。

微生物学的には泡なし酵母は細胞壁が親水性であることが特徴です。

現在の協会系酵母として頒布されているものの70%近くがこの泡なし酵母になります。

 

協会7号

通称「K7酵母」「真澄酵母」。

発酵力が強く、オレンジのような華やかな香りを出します。

下面酵母的な性質を持っています。

吟醸香の強さは協会9号ほどではありませんが、吟醸酒の発展に大きな役割を果たした酵母です。

協会7号は現在でも最も多く使用されている清酒用酵母で、醗酵力が強いため普通酒に使用されるようになりました。

反面、吟醸仕込みにはあまり使われなくっているようです。

協会9号

通称「K9酵母」「熊本酵母」「香露酵母」。

酸が少なく、香気が高いので吟醸酒に向いています。

こちらも吟醸酒の発展に大きな役割を果たしました。

現在でも多くの吟醸酒に用いられています。

協会6号・7号酵母と同様に低温でよく醗酵しますが、温暖地での吟醸造りに向いた前急短期醗酵型のもろみになりやすいです。

通称にもありますとおり、「香露」の醸造元である(株)熊本県酒造研究所の保存酵母から分離されましたが、もとを辿ると岐阜県の「菊川」の蔵で生まれた酵母です。

 

そして「花酵母」の存在を忘れてはなりません。

東京農業大学がなでしこ、ベコニア、ツルバラの花などから分離した「花酵母」は強い吟醸香を引き出すのです。

花酵母を使って日本酒を醸造している蔵の草分けとして「天吹酒造」がありますが、こちらの蔵ではアベリア、イチゴ、月下美人、蔓薔薇、シャクナゲ(石楠花)、なでしこ、ひまわり、ベゴニア、マリーゴールドなどの花酵母から日本酒が仕込まれています。

どのお酒もとてもおいしいですよ。

花酵母も泡なし酵母の一種です。


投稿者:

らけ

酒が大好きです。 特に日本酒が大好きで、一時期日本酒の会で勉強しておりました。 他にはカクテルやワインを好みます。 おいしいお酒、本物のお酒についての情報を提供していきます。

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