名水のあるところに銘酒あり。

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日本酒の8割は水です。

製造過程に使われる水は、製造しようとする総米重量の総量の20倍~30倍は必要になります。

なのでどこの蔵にも専用の水源があるのです。

そして日本酒の味を決めるのも水の質です。(※水がすべてではありませんがその大部分を占めています)

酵母(もと)の育成には水のミネラル分が欠かせません。

 

主な日本酒の産地別に水の硬度を見てみましょう。

兵庫の灘、ここには「宮水(みやみず)」と呼ばれる湧水があります。

ここの水は硬度6.5で、日本酒の生産地としてはもっとも硬度の高い地域になります。

このミネラル豊富な水で造られる灘の酒は、しっかりとした骨太でしゃっきりとした芯のある、からりと後くされのない辛口なお酒になります。

京都の伏見、硬度は4.0でなめらかで柔らかくしっとりと甘みのあるお酒になります。

この伏見よりも柔らかいのが新潟の硬度3.0です。

淡麗辛口で有名なところですね。

そしてこれ以上に軟水なのが静岡で硬度1.0です。

なお、東京は硬度5.5なので意外と硬度が高いです。

余談ですが、一時期流行ったミネラルウォーターのコントレックスは81.4もあります。

 

辛口、甘口の判断基準とは?

一言でいえば「糖分の残り具合」です。

糖度の高いものは甘く、低ければ低いほど辛口に感じます。

そしてアルコール度数ですね。

アルコール度数の高いものは辛く感じます。

うまみの強いものを「濃厚」、あっさりしたものを「淡麗」と表現します。

 

甘口の傾向

大吟醸やにごり酒など酸味の多く糖度の高いタイプのお酒は「甘口」と表現されます。

酸味が強いと舌に味が残り、風味や香りを楽しめるので主役級のお酒と言えます。

 

辛口の傾向

生原酒、清酒など一般的に辛口と感じるのはエキス分や酸味が少なく、糖分が少ないほど「辛口」に感じ、淡麗な味と感じます。

そしてとても重要なのが、水に含まれる鉄分です。

この鉄分は日本酒の天敵です。

お酒の色や味を壊してしまうからです。

なので鉄分の少ない清らかな水が必要とされるのです。

 

それでは、日本酒に適した水とはどのような水なのでしょうか?

マグネシウムやカリウムなどのミネラル分は麹菌や酵母の栄養となります。

鉄分やマンガン、銅などの金属は日本酒の酸化を促しますし、赤色に着色させてしまってお酒の品質を落としてしまうのです。

上記のミネラルを多く含んでいて、下記の金属類の含有率が低いこと。この条件にあった水が最適なのです。

 

灘の男酒、伏見の女酒

先にも触れましたが、灘の宮水はミネラル分を多く含む反面、鉄分やマンガンなどが少なく、とても日本酒に適しています。

ここの水で仕込まれたお酒は辛口で力強い酒になることから「灘の男酒」と呼ばれるようになりました。

それに対して、京都の伏見で採れる水は灘の宮水に比べると硬度が低く、口当たりの柔らかい甘口のお酒になります。

このため、この地方のお酒は「伏見の女酒」と呼ばれるようになりました。

 

硬度が高い(ミネラル分を多く含む)水で仕込むと発酵が素早く進みます。

酵母の栄養となるミネラル分が多いからなのです。そのため、切れ味鋭い辛口のお酒ができます。

硬度が低いとミネラル分が少なくなりますので、その分だけ発酵の速度は遅くなり、甘みを有するお酒に仕上がります。

栄養素が少ないことからその分だけ酒造りも難しくなります。(発酵に余計に時間をとられることになります。)

 

最後に、日本酒を飲むときにも水はとても重要になります。

「和らぎ水(やわらぎみず)」というのをご存知でしょうか?

ウィスキーでいうところのチェイサーにあたります。

日本酒は醸造酒です。

一般的に蒸留酒に比べて翌日に残りやすいとされています。

和らぎ水にはまず、二日酔い防止の効果があります。

もちろん醸造酒はアルコール度数の割に口当たりがいいので、つい飲み過ぎてしまいがちですよね。

アルコールは体内の水分を思った以上に奪います。

一緒に水を飲んでやることで、アルコール分子と水分子がくっついて体内の水分を奪われないで済むのです。

アルコール分子はとても親水性が高いので、これは大事なことなのです。

水を補給してやらないとアルコール分子はたんぱく質やアミノ酸、塩分なども取り込んでいきますし、しまいには脳に行くはずの水分までも取り込んでしまいますので頭痛の原因にもなるんですね。

おいしい日本酒を飲むときには、たまには作ってくれた杜氏さんたちの苦労や工夫に感謝をして、このお酒を育んでくれた自然の恵みに思いを馳せながら、和らぎ水も飲んでやることで悪酔いを防止しましょう。

いつも以上においしいお酒を楽しむことができること請け合いです。 続きを読む 名水のあるところに銘酒あり。

おいしい酒米を作るための土と米。

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酒米に限ったことではありませんが、おいしいお米を作るためには土がとても重要です。

有名なところでは「山田錦」、山田錦はコシヒカリと同じく倒伏しやすい稲です。また同じように病気や害虫・風に弱いので有機農法を行おうとするととても難しい品種でもあります。(病気や害虫対策にはやはり農薬が大量に必要になりますから。)

それでもいいお酒を造るには有機農法がとても大事になってくるのです。

有機農法とは?

有機農産物と特別栽培農産物があり、有機JASで規格されているのが有機農産物です。

特別栽培米との違いは、有機農産物が播種前2年以上及び栽培期間中に対象となる農薬・化学肥料を使用しなかった農産物のことであり、これに対して特別栽培農産物は栽培期間中に対象となる農薬や化学肥料を減じて生産されたものをいいます。

特別栽培農産物の中で、さらに厳しい条件を課せられたものが有機農産物なんですね。

なお、「農薬」のくくりの中には「生物農薬」も含まれます。

これは薬剤を使わずに、天敵や微生物を使って同様の効果を求めるものです。

虫や病原菌がつくことを防ぐために虫や微生物が使われるんですね。

ですから一口に「農薬は悪いもの」といってはいけません。

大事なことは使い過ぎないことなんです。(※これだけ世の中で農薬が敵視されている背景にはJAや国の指導がその一因を担っています。農家に対して、「一定以上の農薬を使えば補助金を交付する」制度のおかげで必要以上に農薬を散布しているわけです。)

農薬や化学肥料ばかりを使い続けると、大事なお米を育てる土が痩せて固くなってしまうのです。

一方、有機農法にも欠点があります。

それは単位面積当たりの収量が下がってしまうことです。

収量が下がるという事は作付面積を広げなければなりません。

人間活動によって発生する温室効果ガスの70%以上が二酸化炭素ですが、約14%はメタンです。

そしてこのメタンのうちの約1割が水田から発生していると考えられているのです。

単純に「収量が減る?だったら作付面積を増やせばいいじゃん。」とはならないのです。(必要な労働力も増えますし)

 

また、たい肥の熟成が不十分な場合はガス障害や高いC/Nによる窒素飢餓を生じてしまいます。(※C/N比とは炭素率のことです。「Chisso/Noudo窒素濃度」の略ではありません)

窒素は植物が成長するのになくてはならないものですから、これは重大な問題なんです。

なぜ窒素がこれほどまでに重要かというと

①自然界では不足気味で、要求量が栄養素の中で最も多い

②タンパク質や核酸(DNAやRNA)など多くの重要な成分の構成元素になっている

③窒素を吸収して利用するためにはエネルギーが必要で、そのためエネルギーを作る光合成や呼吸と関係しており、光や温度などの環境要因の影響を強く受ける

④植物体内での窒素の含量は多すぎても少なすぎても生育にマイナスになり、また適正なレベルは光や温度などの環境によって変化する

といった理由からです。

いかがですか?これだけを切り取ってみても、有機農法がいかに大変かを伺い知ることができますね。

 

さて、稲の話に戻ります。

一般的に酒米の稲は、食用米の稲と比べて草丈が長いものが多いので、それをしっかりと立たせる土づくりもとても難しいものとなります。

そんな困難を乗り越えて栽培されたエリートがお酒になるんですね。

こうして栽培されたお米は「酒造好適米」とされており、「美山錦」、「雄町」と同じくお酒を造るのに特に適した酒米とされています。

心白粒とは?

胚乳部の横断面に白色不透明な部分が平板状又は紡錘状となっているもの
醸造用玄米以外の心白粒は、中心部に白色不透明な部分のあるもので、その白色不透明な部分の大きさが粒平面の2分の1以上のもの
醸造用玄米の心白粒は、中心部以外にのみ白色不透明な部分のあるもの
ただし、白色不透明な部分が中心部にあり、かつ他の部分に及んでいるもの(いわゆる心白流れ)でとう精しても割れないものを除く。 

 (農林水産省 農産物規格規程より)

まぁこう聞いたら難しいかもしれませんが、普通のお米にとってのうまみ成分であるタンパク質・アミノ酸が少なく、心白(でんぷん質)が食用米に比べて大きいことが特徴です。

うまみ成分でもあるアミノ酸が少ないので、食べてもあまりおいしくないんですね。

ここで豆知識を一つ

でんぷんも炭水化物の一種ですが、炭水化物は「有機物のうち糖をベースに持つ一連の化合物」です。

タンパク質は「アミノ酸と呼ばれる有機物がベースとなった一連の化合物」です。

タンパク質は炭水化物と比べて燃焼効率が悪いことも特徴です。

 

余談ですが、紙パックのお酒には米は使われていないってご存知ですか?

正確には3等米未満のコメが使われている可能性はあるのですが・・・そのほとんどはくず米とされた米の粉を使っているのです。

お米の品位規格にはみなさんご承知の通り1等級・2等級・3等級・規格外の区別があります。

3等米は「被害米」や「死米」、「着色粒」、「異種穀粒及び異物混入」の割合が30%以下となっています。

3割と聞くと大きく感じるかもしれませんが、実は2等米でも20%以下、1等米で15%以下は許容されています。

被害米や死米、着色粒については農林水産省の農産物規格規程をご参照ください。

今回は酒米を作るのにとても大切な土と稲のお話でした。 続きを読む おいしい酒米を作るための土と米。

おいしい日本酒を飲んでほしい。

sake日本酒は米と水からできています。味を左右する要素は酒米の育てられた土地とそこを流れる水と作り手の努力、そして菌です。

 

この4つの要素をそれぞれ工夫することでそれぞれまったく違った味わいを作るのです。

同じ蔵であっても酒米を何にするか、麹米をどれにするか、精米歩合をどうするか、これらの材料を杜氏が経験と勘でどう作り上げるかで味が決まるのです。

 

最近では酵母菌に花から採れた花酵母を使う蔵も増えてきました。

元々酵母菌は酒の「もろみ」から分離されて使われてきたのですが、自然界にある花々から様々な酵母を分離して使われており、花酵母の使われている酒はとても薫り高く味わいもすっきりと洗練されたものが多く商品化されています。(花酵母に関しましては東京農大花酵母研究会で主に研究されています。)

 

今では花酵母仕込みの日本酒はあちこちの蔵で採用されていますが、いち早く取り入れた蔵は「天吹酒造(あまぶきしゅぞう)」です。(※ここが日本で最初にとりおこなった蔵かどうかは知りません)

 

さて、ここを訪れた方の多くはサブタイトルの「米と水から作る日本酒が辛くなるわけがない。」という一文に興味を惹かれて来たのではないでしょうか?

これがどういったことか簡単にご説明いたします。

「日本酒は辛口がうまい」・・・・・はい、その通りです。

「この日本酒は辛くない」・・・・・待ってください、その「辛さ」は何と比べているのでしょうか?

 

一般的に辛さを味わう手段としまして、唐辛子や胡椒、山椒などがありますよね?もちろん酒にこの辛さはあてはまりません。

 

それではみなさんは何の味を感じて「辛口の酒」や「甘口の酒」を分類しているのでしょうか?

それはアルコール度数です。

アルコール度数とは、アルコール飲料(ここでは日本酒)に対するエタノールの体積濃度を%で現したものです。

一般的に日本酒の度数は15度前後となります。

 

参考までに、他のお酒のアルコール度数を記しておきますね。(wiki調べ)

果汁(自然に生成されるもの):0.1%以下
ビール:3-9%
アルコポップ:4-7%
シードル:4-8%
バーレーワイン(エールの一種):10-15%
ワイン:10-15%
日本酒:15%前後
ポートワイン:20%前後
リキュール類の大部分:15-55%
蒸留酒(スピリッツ):主として40%以上だが、アメリカ合衆国で「ライトリカー」と呼ばれるものは20%
樽詰め(加水前)のウイスキーやラム酒:54%-95%未満
アブサン:55-89.5%
ニュートラルスピリッツ:95%-96%
スピリタス:96% - アルコール度数世界最高の酒
無水エタノール:99.5-100%

いかがでしょうか?

アルコール度数別に分かれているので見やすいですね。

こうしてみるとわかりますが、比べるものによって辛さや甘さの感覚は当然変わるものなのです。

人間の味覚ですから絶対ではありません。あくまでも相対的な「感覚」なのです。

ここで豆知識としまして、ある一定の度数を超えると蒸留しないとアルコール度数は上がりません。(例:ワインを蒸留するとブランデーになります。)

焼酎も蒸留酒です。

これらのことから、蒸留をせずにおいた酒、いわゆる醸造酒は一定以上のアルコール度数にはなりえないことがわかりますね。

それでは日本酒の辛さとはいったい何が原因なのでしょうか?

それは水に含まれるミネラル分です。

水の硬度が味を決めるのです。

「後に残らないすっきりとした飲み口」、「口当たりが良くて辛口なお酒」とは主に水が演出しているのです。(もちろんこれだけではありませんが。)

ですから「米と水から作るものが辛くなるわけはない」というお話でした。 続きを読む おいしい日本酒を飲んでほしい。